今年一年を振り返ってみますと、5月にコロナが5類感染症に移行され、宿泊業の皆様とのお打ち合わせの中でも、明るいワードや話題が多く聞かれるようになりました。
「過去最高売上」
「施設はじまって以来のギネス記録」
「大規模な投資を伴う改修をこのタイミングで」など
コロナ禍の数年、ずっと耐えてきた皆様が、ようやく日の目を見た、報われたような、そんな気持ちです。一方で、環境や市況が変わることには、どうしても「歪み」が伴ってしまいます。
「経費がどんどん上がっていく」
「人が足りない」といった、
内側のバランスが、これまで以上に大きく乱れた一年であったように思います。
この一年の”大きな波に乗る”過程で、
・波の状況を捉えながら次の一手を考えた(人/会社)
・必死に食らいついた(人/会社)
・波にのまれかけた(人/会社)
この差によって、明暗が大きく分かれてきてしまうのが、2024年以降です。
度々、「この先もこの状況は続くと思いますか?」という質問をいただきます。
その時点での予測はお伝えできても、実際にいつ・何が起こるかは、誰にも言い当てられません。
(よほど精度の高い占い師なら言い当てられる…?)
ですので、私たちにできることは、”どんな波が来たとしても耐えられる”、そんな「事前準備」をしておくことしか、ないのかもしれません。
人が足りない=それぞれが使える時間も日常業務によってどんどん圧迫されている、という状況ですから、今そこに時間を割くのは難しい、という施設様もいらっしゃることは重々承知しておりますが、絶対に避けていただきたくない、重要な業務です。
◆「事前準備」の中身
・担当者の勘と経験に依存している業務の洗い出し・見直し
・普段はオペレーションでカバーしている、実は非効率な業務のデジタル化やシステム化
・施設の魅力や、出せる付加価値に関する認識を一致させること
など、挙げればキリがないのですが、変化の激しいタイミングで一番重要なことは何か。それは、「指針」だと考えます。
「うちの施設は、どんなお客様に、どんな施設として、どのように利用いただきたいのか」
ここが(実は)定まっていない、経営陣は共通認識を持っていても、担当者レベルには落とし込めていないと、それぞれの担当者が、それぞれの感性に従って、事前準備をしていきますから、結果として、軸のない、四方八方に発散しただけの着地を迎えます。
システム投資も、人材の採用・育成も、レベニューマネジメントも、「指針」があってこそ、脇道に逸れることなく、その施設にとっての正しいルートを進めるのだと思います。
◆長く生き残っていく施設
指針を持った良い施設が、長く生き残ってほしいと思いますし、私自身は、宿泊業の皆様とお仕事をしている人間でありながらも、ビジネス・プライベートで、各地のホテル・旅館を利用する宿泊者でもあります。
一般の宿泊者という視点で、
❶(初見で)OTAでスクロールしながら「選びたくなる施設」
❷(リピートで)つい「また利用したくなる施設」
❸(反対に)残念ながら「もう泊まることはないと思った施設」
の特徴がそれぞれいくつかあります。
❷の視点では、冒頭のメッセージカードの写真で顕れるような、スタッフさんの気遣いが細やかな施設、というのも一つの要素です。
「生産性アップ」「人手不足」という観点から見れば、ゲストに手書きでカードを書く、という業務は淘汰されていくのかもしれません。
一方で、指針によっては、他の業務をなるべく効率化して、手書きのカードのようなおもてなしの部分を、存分に残していく、グレードアップさせていく、という施設も出てきてほしい、残ってほしいと、私個人の宿泊者視点では感じます。
他方、無人で誰とも関わらずに宿泊できる施設を選びたい、という宿泊者もいるでしょうし、様々なバリエーションを持った施設が、それぞれのターゲットに向けて、良い宿泊体験を提供していただきたいと思います。
◆本年もありがとうございました
2023年も、コラム、セミナー、ジャッジプライスなど、様々な場面で多くの宿泊業の皆様と関わらせていただきました。本当にありがとうございました。
来年、4月1日をもって、船井総研デジタルは、船井総合研究所と合併いたします。
よって、コラムやジャッジプライスの運営等も、元の管轄であった船井総合研究所に移ります。
会社の合併というのも、”波”の一つですが、我々がどんな仕事をしていくべきか、一人ひとりがブレずに考えられるのも、会社としての指針(グループパーパス)があるからかもしれません。
合併に伴い、皆様により深く、より様々なテーマで、伴走できる体制となりますので、2024年も、引き続き変わらぬご愛顧をいただけますようお願い申し上げます。